俺様常務の甘い策略
「いたっ」

チクッと鋭い痛みが走ったかと思うと、指から血が出てポタポタと床に落ちる。

「沙羅さん‼」

和久井さんが私に近づいて手に触れようとしたその刹那、私の視界にもう一本別の手がすぐに伸びてきて私の手を掴んだ。

「危なっかしいな、沙羅は」

颯介の声に反応して顔を上げた私は、こいつの顔をじっと見る。

颯介?いつの間にここへ?

突然の颯介の登場に私は呆気に取られ、その言葉に二重の意味が込められていた事に気づかなかった。

「ボーッとしないの」

そう私に注意すると、颯介は怪我した私の指を注意深く眺める。それから、ポケットからハンカチを取り出すと、私の指を押さえて止血した。

「ちょっと深く切ったみたいだけど、しばらく押さえてれば血は止まると思うよ」
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