俺様常務の甘い策略
渡辺の事を意識してるのは知ってるんだからね。

「寂しがってるのは秋月さんでしょう?その左手の薬指に触れながらいつも仕事してるのは誰ですか?もう癖になってるの自覚してます?その指輪、藤堂さんからのですよね?」

田中さんに言われてハッとする。

今も右手の指でそっとダイヤの部分をなぞってて……。

うそ……。言われるまで気づかなかった。

いつの間にこんな癖ついたんだろう。

じっと左手の指輪を見ていると、専務室から戻ってきた夏海ちゃんが私に声をかけた。

「あっ、沙羅さん、今、会長室に藤堂さんのお母様が見えてます」

「えっ?ほんと?」

私は椅子から立ち上がり、グラスを用意すると冷蔵庫から麦茶を出してグラスに注ぐ。

「……ちょっと会長のとこに行ってくる」

結局、田中さんの指摘に何も言えず、お盆を手に持つと田中さんから逃げるようにして会長室に向かう。
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