俺様常務の甘い策略
講演を中止にしてしまったら、それこそ颯介が死んだって言ってるようなものじゃない。

私は信じない。

飛行機は墜落したとはまだいっていないのだ。

そうよ、まだ可能性はある。

「秋月さん……私も手伝います」

いつもなら何かいちゃもんつけそうなのに、田中さんはちょっと悲しそうな目で私を見つめた。

「田中さん、ありがとう」

私は心から田中さんに礼を言う。

それから二十分後に会長が戻り、スマホでニュースを観ながら日常業務をなんとかこなした。

社内講演の三十分前。

私と田中さんは風間物産のビルの最上階にある二百人収容の大会議室に行き、講演会場の準備を黙々とする。

講演五分前になると、会場の席がほとんど埋まってきた。

だが、まだ颯介達は戻って来ない。
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