俺様常務の甘い策略
「秋月さん……どうします?これ以上は待てませんよ。やっぱり中止に……」

田中さんの悲観的な言葉に私の心は揺れた。

絶望的なこの状況。でも……私がここで諦めてしまったら、颯介はもう戻って来ないような気がして……私は頭を振った。

「私が時間を稼ぐ。颯介も渡辺も絶対に帰ってくる」

田中さんに……というよりは、自分に必死に言い聞かせる。そんな私に田中さんはもう何も言わなかった。

颯介が死んでたまるか!あいつが私を残して死ぬはずがない。

私は絶対に認めないし、私が死なせない!

講演時間になり、私はマイクを右手に持つと、勇気を振り絞って壇上に上がる。

こんな大勢の前で何か話すのは、高校の弁論大会の時以来だ。

あの時は颯介が優勝で、私が準優勝だったっけ?

当時の事を思い出しながら、笑顔を張り付ける。

私はあんたの永遠のライバルよ。時間稼ぎくらい朝飯前よ。だから、早く戻って来なさいよ。

「今日は多くの方にお集まり頂きとても嬉しく思います。まだ藤堂社長が就任したばかりで社長の事をあまり知らない人も多いでしょう。社長の講演の前に彼の経歴についてお話ししたいと思います。藤堂社長は……」
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