俺様常務の甘い策略
「ここ盆地だから結構暑いわよ。覚悟してね」

手で顔をあおぎながら、颯介の方を見る。

すでにこの湿気で身体がだれそう。

なのにどうしてこいつはこんなに涼しい顔をしてられるのだろう。

「了解」

フッと微笑する颯介。

うちの実家に行くというのに全く緊張してない。

まあ、そこが颯介らしいのだけど。

改札を出ると、父が迎えに来ていた。

「やあ、いらっしゃい」

柔らかな笑みを浮かべて挨拶する父。二年ぶりに会う父はちょっと白髪が増えていた。もう五十五だし年相応なのかもしれないけど、久しぶりに会うと年をとったなって感じる。

「お父さん、こちら藤堂颯介さん」

ちょっと恥ずかしくて仏頂面で颯介を父に紹介する。

「初めまして、藤堂颯介です。もっと早く伺いたかったのですが仕事の都合がつかなくてすみません」

颯介がにこやかに笑いながら軽く頭を下げる。
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