俺様常務の甘い策略
「来てくれてありがとう。長旅で疲れたんじゃないかな」

父が優しく気遣うと、颯介は父に向かって微笑んだ。

「いいえ。車窓から見る田園風景が新鮮で。山もあって緑豊かだし、見てると何だかホッとしますね」

実際、車中颯介は終始機嫌が良すぎて気持ち悪かった。まあ、心からこの旅を楽しんでいたんだろうけど……。

この王子スマイル。うちの父にはかなり好印象らしい。

結婚相手として親に紹介するのに、藤堂颯介は最強の恋人と言えるだろう。

経済力があって、有名会社の社長で、頭が良くて、顔も良い。おまけに娘の同級生で気心が知れている。そんな颯介に文句を言える親がどこにいる?

家に着くと母と祖父母が待っていて、颯介はこの笑顔で完璧な挨拶をした。

「本当に颯介さんのような方がうちの子をもらってくれて良かったわあ。もう二十八でしょう?こっちに呼んでお見合いでもさせようかと思ってたのよ」

母は笑顔で有り難うと颯介にペコペコ頭を下げる。

アラサーの娘が超優良物件と結婚すると言うのだから、親が喜ばない訳がない。
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