俺様常務の甘い策略
「お前、やっと結婚するって?もの好きがいて良かったな」

冷やかすように言って、涼太はチラリと颯介に目をやる。

「あんたはずっと独身じゃない?まだ定職についてないでフラフラしてるんでしょう?」

涼太の言葉にムッとした私は負けじと言い返す。

だが、奴はニヤリと笑った。

……なんか不気味な笑み。気持ち悪い。

「沙羅、あんた知らなかったっけ?涼君は小説家なのよ。しかも、売れっ子作家。有栖川尊って名前で書いてるのよ」

母がフフッと笑う。

有栖川……尊?……その名前は知ってる。小説は読んだ事ないけど。

……直木賞候補にもなった有名作家じゃん。

「……フリーターかと思った」

だって、大学卒業後は海外を渡り歩いてるって聞いてたし……。

「締め切りが終わったから、ちょっと叔父さんのところに遊びに来たんだよ」

ハハッとどや顔で笑う涼太。この勝ち誇ったような顔。

……こいつに敗北感を感じる。
< 274 / 299 >

この作品をシェア

pagetop