俺様常務の甘い策略
俺は怒りを抑えながら涼太に声をかけた。

こんなに余裕がない自分は初めてかもしれない。

「ごめん。転がってたからつい投げてみたくなってね」

悪魔のように微笑んで、俺は涼太を見据える。

自分の大事な女に手を出されて平気な男はいない。俺だって例外ではない。

「酔ってるとしても悪ふざけが過ぎるんじゃないかな?」

冷ややかな眼差しで涼太を見て沙羅から引き剥がせば、こいつは俺の手を払いのけくだらない言い訳をした。

このままで済むと思うなよ。

俺は沙羅の手をつかんで立ち上がらせると、彼女を安心させるように笑顔で言った。

「沙羅、先に戻ってて」

ちょっと震えていたし、ひょっとしたら空き巣に襲われた時の事を思い出したのかもしれない。

早く部屋に戻らせるのがいいと思った。

それに、聞こえてきた沙羅と涼太の会話からすると、彼女は涼太が自分の事が好きだとは気づいていないらしい。
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