俺様常務の甘い策略
三十までに結婚して子供を生まなければ、卵子が徐々に老化する。

もう私にはあまり時間がないのだ。

でも、普通のサラリーマンと結婚して、いつも家計簿とにらめっこしてつまらない生活をするなんて嫌。

格好良くてお金持ちの人と結婚して幸せに暮らしたい。

「貧乏な生活なんてもうごめんだわ」

ポツリと呟きながら、和久井さんの名刺をじっと見る。

イケメンだし、性格も良さそうだし、浮気もしなそう、会社も安定してるし……。

四人の中では彼が一番妥当かな?

でも……自分の望む条件を全て満たしていない。

う~ん、決め手にかけるのよね。

もっと華やかな生活がしたい。

私が考え込んでいると、不意に男性の声がした。

「和久井は三男だけど、いいのかな?会社は副社長の長男が継ぐと思うよ」

聞き覚えのあるその声に、私の身体が一瞬にして固まる。

嘘でしょう?

……まさか、あいつがここにいるはずがない。

だって、あいつはアメリカにいるはず……。
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