俺様常務の甘い策略
「小さい頃、よく祖父の家に遊びに行ったけど、素手で蝉とかトンボ捕まえたわよ」

この時の私はすでに藤堂の策にはまってるなんて思ってなかった。

藤堂を追い出す事をすっかり忘れ、ケーキを堪能する。

結局、甘い誘惑に負け、こいつに対する警戒心を解いてしまった。

「秋月って、結構野性児だったんだ。ほら、次もいくよ」

優しく微笑む藤堂に言われるまま口を開くと、突然秘書室のドアが開いて社長が入ってきた。

「沙羅くん、明日なんだけどね……おっ‼」

私と藤堂を見て社長が驚いたのか目を丸くする。

「あっ……」

社長の登場に私は口をあんぐり開けたまま固まった。

マズイ、マズイよ。

この状況……端から見たら、恋人同士がいちゃついてるように見えるんじゃないだろうか?

「お邪魔だったかな?」

すぐに気を取り直した社長がニコニコ顔で私に微笑むと、藤堂が落ち着いた様子で社長に注意した。
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