俺様常務の甘い策略
意地悪く秋月の鼻を指で摘まめば、彼女はちょっと苦しそうに「うぐっ」と悶えた。

すぐに指を離して、秋月の額を軽く小突く。

今までこんな風に男の腕の中で無防備に眠った事はあるのだろうか。

俺が秋月に変な虫がつかないように牽制していたせいか、彼女に彼氏がいたという話は今まで聞いた事がないが、起きたら問い質さなくては……。

物思いに耽りながら秋月のシルクのような綺麗な黒髪を撫でていると、突然ドアが開いて田中さんが入ってきた。

「藤堂さん……?」

俺達を見てハッと息を飲んで目を見開く田中さんに、俺は自分の事は棚に上げて平然とした顔で優しくたしなめた。

「田中さん、入る時はノックをしないと」

田中さんは俺の言葉が耳に入らなかったのか、少し青ざめた顔つきで聞いてきた。

「……藤堂さんって……秋月さんと付き合ってるんですか?」

まあ、この状況を見れば誰でもそう思うだろうな。

「近いうちにそうなる予定だよ」

まだ秋月の了承は得ていないけどね。
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