俺様常務の甘い策略
「俺は冷たい男だけど、そいつは優しいからね。一から君を鍛え直してくれる。君にプライドがあるなら早く決断すべきだと思うよ。秋月がキレないうちにね。こいつを本気で怒らせると怖いよ」

すやすやと眠っている秋月の顔を見ながらクスッと笑うと、俺は彼女を抱き上げてソファーから立ち上がる。

田中さんは何か考えるようにじっと秋月を見据えた。

「今日の歓迎会の準備、ありがとう。お陰でいろいろと楽しめたよ」

いかに秋月が食べ物に弱いかがよくわかったしね。

優しく微笑んで秋月を抱き上げたまま秘書室を出ると、そのまま地下の駐車場に直行して自分の車の助手席に彼女を乗せた。

シートベルトを締めてやっても秋月が起きる様子はない。

「ほんと、もっと危機感持ったら?」

今、お前は俺にお持ち帰りされるんだけどな。そんな無防備で良いのか?

半ば呆れるように呟いて、秋月の頬を軽くつねる。

ちょっと可愛い彼女の変顔に思わずクスッと笑みが溢れた。

今、秋月を起こして彼女に住所を聞く気はなかった。

ちょっと彼女にお灸を据える必要がある。
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