妄想ラブレター



それは無性に人を苛つかせる笑みだと思う。



「やっぱりってなに? 何かあるの?」



あたしはカンから視線を外し、外を見やる。


これ以上カンの笑みを見てたら無性に苛つくから。それに、カンが言ってるものが何なのか気になって。



「中庭に雪村先輩がいるんだよ」

「雪村先輩?」



誰それ。



「ほらあそこにいるのが……」



指を指した先を追おうとした時、アキはカンのスネを蹴り上げ、彼が痛がっている間に再びローキックをお尻に食らわせた。



「いってぇ!」

「それはこっちのセリフだろーが!」



悶える長身男。


そんなカンを吐き捨てるように一瞥し、立ち去った。


アキが立ち去る瞬間、一瞬あたしとも目が合ったけど、特に何も言わず行ってしまった。



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