妄想ラブレター
……あっ、もしかして。
「ねぇ、カン」
「なんだよ」
まだアキに蹴られたところ(特にスネ)が痛いのか、涙目で廊下に座り込んでる。
久しぶりにカンを見下ろす感覚に、ちょっぴり優越感を覚えながら聞いた。
「雪村先輩ってもしかして……前に言ってたアキの好きな人?」
「……なんだ、今日はやけに冴えてるな」
痛いくせに。スネを抱きしめるように摩りながら、涙目の瞳は再びいやらしく微笑んだ。
……やっぱり、ね。
あたしは再び窓の外に目を向ける。
ちょうど冷たい突風があたしの瞳を乾かし、身を震わせる。
……だから冬は嫌いなんだって。
風が止んで細めていた目を開けた先には、黒い髪が艶やかに輝く女子がちょうど校舎に入っていくところだった。
夏の面影を残した焼けた肌。頭の良さそうなキリッとした目鼻立ち。すっきりと綺麗な色の愛らしいアーモンドアイ。それを輝かせながら口元には笑みが見えた。
「あれが、アキの……」
なんだよアキのやつ。超メンクイじゃん。
いなくなった雪村先輩の残像が目の奥に残って離れなくて。あたしはじっと人が減ってゆく中庭を予鈴が鳴るまで見つめてた……。