妄想ラブレター
「言っとくけど、そんなんじゃないから」
「そんなんって?」
「だーかーらー」
アキには好きな人がいるから。だから変な勘ぐりはやめて欲しいんだってば。
あたしがそう言おうとした矢先、
「じゃっ、また明日ね!」
なんてあっさり手を振って去って行く。
何を慌てて……?
「悪い、邪魔した?」
少し離れたところからアキが自転車を押しながらこっちを見てる。
あたしはもう一度去ったまおみの後ろ姿を見やり、すぐにアキの元へと歩き出す。
「ううん、大丈夫。早く行こう」
なんだか居心地悪くって、足元がおぼつかない。
人の視線をやたらと気にしてしまう。
ひんやりとした風があたしの髪を、頬をかすめてゆくのに、手のひらはじわりと汗ばんでいて気持ち悪い。