妄想ラブレター
*好きな人
*
「着いた」
ギギッ、とブレーキが鈍い音を立ててあたし達を乗せた自転車は停止した。
足が地面に着いた瞬間、パッと両手をアキから放し飛び降りる。
制服から香るアキの家の匂い、意外とがっちりしてるお腹周りの感覚……そんなものに後ろ髪引かれるあたしは、やばいと思う。
これじゃただの変態じゃん……。
「なにやってんだ?」
両手を見つめて一喜一憂していたあたしを不審そうな眼差しで見つめながら、自転車を止めるアキ。
「ケっ、ケーキが食べれる喜びを感じてただけ!」
なんだそりゃ。
我ながら苦しい言い訳。
「なんだそりゃ」
あたしの心の声をそのまま発したのは、アキ。
「そんなに来たかったのかよ。女子って甘いもの本当好きだよなぁー」
「いやいや、アキだって好きでしょうが」
「おれは普通」
どこが。
スイーツ男子のクセして。