妄想ラブレター
ずっと胸の奥がムズムズする。くすぐったい。けど、苦しい。
もっとそばに近寄りたいって思うのに、近づこうとするがっついた自分がすごくみっともなく思える。
心臓の音がうるさいし、顔は火照ってくるし……恋ってとても、煩わしい。
そう思う反面、胸いっぱいの充実感。
「けど、困ったな……」
なんであたしはよりにもよって、他に好きな人がいる相手を選んでしまったのだろう。
あほだな。間違いなくあほだ。
アキが先輩と話す姿を思い出すたび、心臓に刃物を突き刺された時の様に痛いし、苦しいし。
あたしとアキはただ席が近いってだけ。クラスメイトってだけ。
「はぁ、」
再び溜め息を零し、水道の水で手をすすいだ。
本当は顔をバシャバシャ洗いたいところだけど、それはさすがに無理だから念入りに手をすすぐ。冷たい水が肌を刺し、あたしの頭をはっきりとさせてくれる。
鏡の中に映る自分をキッと睨むように見つめ、
「よし!」
かけ声とともにトイレを後にした。