妄想ラブレター



窓際の小さな席。かばんは背もたれに掛け、席に座った瞬間にアキも足早にやって来た。


何も言わずただ黙ってあたしの向かいに座ると、席を案内してくれた店員さんが注文を取りに来てくれて、あたしは人気No.1と書かれたケーキとカフェオレを注文した。


アキはマカロンとブラックコーヒー。


ケーキは食べないんだ。でも、マカロンなんて選ぶところがスイーツ男子だなって思う。


オーダーを聞いて立ち去った店員さんを見送ってから、アキはゆっくりと口を開いた。待ってましたとでも言わんばかりに。



「なんかあった?」



きた。

そりゃこれだけ不審な動きしてたら、聞きたくもなるわな。



「なにも」

「嘘つけ」

「嘘じゃない。なにもないってば」

「隠すなよ」

「隠してない」



ひじをついて、窓の外を見やる。


ちょうど窓の向こうはテラス席。こんな寒い中、カップルは仲良くケーキを食べあってる。ああいうのしたいと思ったことないけど、なんでだろ。


今日はちょっと羨ましい、と思う。



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