妄想ラブレター
「お待たせしました」
重苦しい空気を爽やかな声が割って入る。
にこやかに笑みを携え、片手で軽々と持つトレンチからひとつひとつテーブルへ置かれてゆくケーキのお皿にコーヒーカップ。
「わぁ! すごい!」
思わず握りこぶししちゃう。だってだってすごく美味しそうだし、何よりかわいい。
一番人気のショートケーキ。真っ白な生クリームの上にはゴロゴロと赤いイチゴ、そしてその真ん中にはいちごの形したマカロンが刺さってる。
中のスポンジの間にも色とりどりのフルーツが詰め込まれてて、見てるだけでもよだれがやばい。
思わず手の甲で口元を拭ってしまった。
「やばい! めっちゃ美味しそう! ほら見てアキ、アキもケーキ頼めば良かったのに。だけどあたし、絶対分けてあげないから」
「ぷっ、別にいいって」
興奮した熱が、アキの笑い声で一気に平熱に変わってく。