妄想ラブレター



さっきまで気まずいようななんとも言えない空気が漂ってたのに、そんなことも吹っ飛ぶくらいケーキに夢中になってしまった。

でも、そんな中でもアキの笑った声はあたしの耳にクリアに響いて、惹き付けた。


ケーキから視線を外し、顔を上げた目の前には、アキの満面の笑み。


優しく太陽の陽だまりのような、笑顔。寒い空気も吹っ飛ぶほど、ほわほわとした暖かさが伝わる、そんな笑顔。


ーーあたしが一番好きな、アキの顔。



キュウ……。



胸の奥でなにか小動物のような鳴き声が聞こえた気がする。


そして一気に恥ずかしさが込み上げてくる。


あ、あたし……意地汚いヤツって思われたかな……?

いや、思ったよね。間違い無く。

なんであんな事口走ったんだろう。興奮しすぎだから。間違い無く興奮しすぎ。



「食べないの?」

「た、食べるよ!」



そばに置かれたフォークを握り、端から削り取るようにケーキをすくった。


アキは注文したブラックコーヒーを優雅に啜ってる。啜りながらあたしをじっと見てる。



< 167 / 287 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop