妄想ラブレター
さっきまで気まずいようななんとも言えない空気が漂ってたのに、そんなことも吹っ飛ぶくらいケーキに夢中になってしまった。
でも、そんな中でもアキの笑った声はあたしの耳にクリアに響いて、惹き付けた。
ケーキから視線を外し、顔を上げた目の前には、アキの満面の笑み。
優しく太陽の陽だまりのような、笑顔。寒い空気も吹っ飛ぶほど、ほわほわとした暖かさが伝わる、そんな笑顔。
ーーあたしが一番好きな、アキの顔。
キュウ……。
胸の奥でなにか小動物のような鳴き声が聞こえた気がする。
そして一気に恥ずかしさが込み上げてくる。
あ、あたし……意地汚いヤツって思われたかな……?
いや、思ったよね。間違い無く。
なんであんな事口走ったんだろう。興奮しすぎだから。間違い無く興奮しすぎ。
「食べないの?」
「た、食べるよ!」
そばに置かれたフォークを握り、端から削り取るようにケーキをすくった。
アキは注文したブラックコーヒーを優雅に啜ってる。啜りながらあたしをじっと見てる。