妄想ラブレター
『なー早くなんか言えよ。……っておい、どこ行くんだよ!』
『うるさい。トイレだついてくんな』
『なんだよアイツ……。まぁとりあえず待ってるからな。場所はLINEで送っとくし、絶対来いよ』
「……行かないってば」
そう言ったあたしの言葉を聞く前に、カンは電話を切った。
本当に勝手な奴だ。絶対行ってなんかやんない。
アキとだって気まずい。気まずい上に、先輩の気持ちまで知ってしまった。
あたしは完全に手詰まりだった。
……なのに、さっき聞こえたアキの声。あの声があたしの耳の奥深くではんすうしてる。
騒がしい背後で小さく聞こえたアキの声。あたしはそれを聞き逃さなかった。
全神経を傾けてアキの声を拾った。
きっとアキはまだ前の事を怒ってるんだと思う。
アキってばしつこいやつだから。
でも、ちょうどいいかもしれない。
このまま離れれば、これ以上心を乱さなくてすむかもしれない。