妄想ラブレター



あたしが球に憎しみを込めてるちょうどその時、隣のレーンから歓声が上がった。



「瀬戸すごーい!」

「おお! 次ストライク取ればターキーじゃねーか」

「えーマジで! 瀬戸くんかっこいいー!」



ちょうど隣でアキが2本目のストライクを決めたところだったみたい。


あたしの方は一切見向きもせず、颯爽とした足取りで仲間のいる席へと戻ってく。


各々でハイタッチを交わしながら……。



「ちっ」



思わず舌打ちがこぼれる。


けどそれも隣のレーンの盛り上がりにかき消された。


なんであたしはカンとのチームなんだろうか。


それよりなにより、アキのやつ、隣のクラスの女子とも仲良さそうにしちゃって。


瀬戸くんかっこいー! だって。チヤホヤされて内心ではすっごい喜んでるに違いない。


……あの手紙を渡した時みたいに。


思い出しただけでイライラする。



その怒りをぶつけるように球を投げた。


もちろんちゃんとピンに向けて。


けど。



「ツヤコ、とりあえず球の重さ変えてこいよ。完全に腕持ってかれてるだろ」



アドバイスらしきコメントをしながら、カンはお腹を抱えて笑った。


あたしの投げた球はさっきとは反対側の溝に納まって、消えてった。



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