妄想ラブレター
「ばかやろう。家族愛より友達愛だろ!」
「だまれ他人」
「ひどいな、おい」
明らかに大げさな様子でショックを受けるカンの横を通りすぎ、席に戻って荷物を取る。
そばにいたクラスメイトに声をかけると、みんな良いヤツばかりだから残念そうにはしてくれたけど、これ以上はごめん……。
そう心の中で謝りながら、立ち去った。
「……帰んの」
靴を履き替えてる時だった。そう、背後から声が聞こえたのは。
振り向くとそこにいたのは、アキ。
あたしが机の上に置いてきたアキ用のブラックコーヒーを飲みながら。
ちょっとばかり驚いて、一瞬固まってしまった。
いや、もしかしたら久しぶりに話すから緊張してるのかもしれない。
どちらにせよ言葉は喉の奥へと引っ込んでしまったみたいだ。