妄想ラブレター
前に火星にいる設定で書いたSFチックなラブレターを渡した事があったっけ。
ーー同じ惑星にいた時はこんな気持ちにならなかったのに、今はアキに会えなくて寂しいと思ってる自分がいる。
不思議だな。
あれは妄想で書いたラブレターだったのにな。
それが今では現実になってる。
ーー何億光年離れて初めて気づいた。あたしはアキがいないととても寂しい。
本当に。思っていたよりも寂しい。
本当に寂しい時や悲しい時って、意外と涙は出ないんだなって冬休みに知った。
ボーリング場でアキに言われたあの一言。
“無理におれの暇つぶしに付き合わせて悪かったな”
あれは恋文交換の終了を意味してた。
そしてその通り、お互いずっと手紙を出し合う事はなくなってしまった。
告白する事もなく、あたしの恋は終わった。
このままきっと、進級して、クラスも別れちゃったりして……そうしてあたし達の接点は、なくなるんだ。
席が近くなる前に戻るんだ。
お互いの事をよく知らず、名字に“さん”や“くん”を付けてたあの頃に。
あたしはチラリと後ろを振り返った。教室の真ん中の列の一番後ろの席、アキの座る席を。
けど休憩中のその席にアキの姿はなかった……。