妄想ラブレター
「ああ、そうだよ。……おれ達、付き合ってる」
どことなく気まずい空気を初めに割ったのは、アキ。
改まって言われると、すごく恥ずかしいんだけど……けどアキの方は赤面するどころか笑顔もなく、静かにそう言った。
「はっ、ははっ。なんだよおい、そーいう事はちゃんとおれに報告してくれよ!」
「いや、だからこうして言ってんじゃん」
何言ってんの? そう思い、両手で頬を隠しながらそう言った。
「はぁ、まあそーだけど、ははっ……」
さっきから、一体何がそんなにおかしいのか。
なんかカン、変だぞ。
……いや、いつも変だけど。
それとはまた違った、変な感じ……。
「なんつーか……娘が嫁に嫁ぐって知った時の父親の心境って、こんな感じなんだろな」
「誰が誰の娘だって?」
「パパって呼んでもいいぞ」
「だまれ他人」
「ひでぇ! それマジで傷つくんだからな! なぁアキからもなんとか言ってやってくれよ」
「他人が慣れ慣れしく人の名前を呼ぶなよな」
「お前もひでぇな!!」
カンは顔を覆い、泣きまねをしながら
「幸せになれよ!」
捨てゼリフらしからぬ言葉を吐き捨て、教室から出ていった。