妄想ラブレター



……ん?

なにこれ?


足元に落ちたのは白い紙。どうやら封筒のようだ。


それを拾い上げて、表を見ると……秋月艶子さまって書いてある。


あっ、これってもしかして……。


思い当たる節はある。そう思って手紙の裏を返してみると、やっぱり。


表と同じ、少し角張った文字でーー瀬戸文章って書かれてる。



「ーー瀬」



……おっと、まだ怒ってたんだった。


振り返る様子もないってことは、きっとこれ、だいぶ前に入れたな。


でも昨日までは入ってなかったはずだから、今朝早くか昨日の放課後か。


あたしはマジマジと手紙を見つめる。


真っ白な封筒。


柄やほかの色は一切ない。


封もされていない手紙。



……なっ、


なんかわかんないけど、ドキドキしてきた。



だってこれ、一応ラブレターなんだよね?


どんなことが書いてあるんだろう……。


人が綴る恋文。瀬戸の想い。瀬戸の恋心。


それは全て嘘だと分かっていても、ちょっとワクワクしている自分がいる。


なんだ……意外と楽しいかも。そう思いながら、封筒の中から手紙を取り出した。


中の便せんも真っ白だった。四つ折りに畳まれた紙が一枚入ってるだけ。


それをゆっくりと開いてーー。




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