妄想ラブレター
「……瀬戸」
なかなか振り返らないから、あたしは瀬戸の背中をつつく。
「……なんだよ」
ぶっきらぼうに顔だけ振り向く。
「これ」
そう言って顔の高さまで掲げたのは、白い便せん。
それを瀬戸の目の前でーー。
ビリビリビリッ!
勢い良く引き裂いた。
「ーーはっ……?」
呆然と動かない瀬戸に、破いた手紙を突き返す。
「じゃ、おやすみ」
机に伏せて眠りにつこうとしたけど、それを阻害されて今度はあたしが不満顔を向けてやる。
「まっ……待て待て待て! これ、ちゃんと中身読んだか!?」
「読んだに決まってんじゃん」
「じゃあ何で破く!?」
「だからそれ、ゴミだからだでしょーが」
なーにが恋文だ。
なーにがラブレターだ。
手紙の中にはたった一言、
“すきです”
ただそれだけ。
たったのこれだけ。
……あたしのウキウキした時間も、ちょっとドキドキしたトキメキも全部まとめて返せ!