妄想ラブレター
「……書いてみると意外とむずいんだって」
「でも一週間もかかって、これなわけ?」
おっと、口がすべった。
ほんと思った事をつい言ってしまうあたしの悪いクセ。あーあー、瀬戸がまた怒ってる。
瞳はギロリと鋭く睨みつけて、彼の泣きぼくろすらあたしを責めるように見てる。
「……だったら、秋月はさぞお手本になるような手紙書いて来てくれるんだろうな?」
「ぐっ……」
しまった。
これは完全に墓穴だ。
ハードルを自分であげてしまってる。
「い、いやぁ~……」
「おれを惚れさせるような、さもすごいラブレター書いてくれるんだろうな」
「いやいやそんな。でもそれよりかは書けるかもしれないけど……」
はっ、まただ。
「ほーぉ」
あたしのばかやろー。
少しつり目の瀬戸はさらに目尻を引き上げて、瞳を怪しく煌めかせる。
「秋月からのラブレター、楽しみだなぁ」
「あっ、いや、ちょっと待って……」
引き止めようにも、瀬戸は有無を言わさず前を向いた。
そしてその後……瀬戸が後ろを振り返る事はなかった。
そのまま授業が始まるチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきてこの話はそれで終わった……。