妄想ラブレター
息が出来るようになって、すかさずカンの足を思いっきり踏みつける。
「いっ!」
案の上、カンは飛び跳ねるように声をあげた。
「痛くない痛くない。男の子でしょ~?」
「ツーヤーコー!」
再び首にカンの腕が忍び寄り、それをサラリとかわした瞬間、瀬戸くんと目が合った。
「2人って、ほんと仲良いよな」
「おっアキじゃん! 何だよお前、そこの席なのかよ。いいなぁ~」
「アキ?」
なにその女子みたいな名前。瀬戸くんそんな可愛い名前だったっけ?
なんていうそんな疑問が顔にあらわれていたのだろう。今度は瀬戸くんの首に腕を巻きつけながら、カンは言う。
「瀬戸文章。フミアキだからアキ、な!」
ふーん。なるほどね。
「なぁアキ。おれと席交換しねぇ?」
「しない」
「薄情者め! お前がそんなやつだとは思わなかったぞ!」
「はいはい、おれは薄情者だ。だからお前はさっさと席に戻れよ」
「なんだよ冷めてぇなー」
そんな事言われて引き下がるようなカンじゃないけど、ちょうどタイミング良く1時間目が始まるチャイムが鳴った。
カンは「ちぇっ」って舌打ちしながら渋々席に戻っていった。