妄想ラブレター
「ーー秋月」
瀬戸が振り返り口を開いた瞬間、あたしは顔を上げて言葉を待った。
「こんなの、よく書けるよな」
……は?
瀬戸は口元を隠すように抑えながら、手紙を再び見やった。そして再び無言。
ちょっ、今なんて言った?
コンナノヨクカケルヨナーー?
「……返せっ!!」
瀬戸の手から勢いよく手紙を奪い取る。その時ーー。
バリッ。
あっ……、あたしの手紙が……。
薄い黄色のシワシワだった便せんは、1枚から2枚に増えた。
「瀬戸ぉ~! それ、昨日の仕返しのつもり?!」
あたしの手には半分に引き裂かれた片割れだけ。元は一枚だったもう片方の便せんは瀬戸の手に握られたままだ。
「ちょ、待てって! おれは何もしてないだろっ! 秋月が急に引っ張るから」
「問答無用! 今、この手紙とともにあたしと瀬戸の仲にも亀裂が生じたって事を覚えてろよっ! もう二度と口もきかないんだから!」