妄想ラブレター






「瀬戸、おはよ」

「あー、おはよ」



玄関口に瀬戸がいた。


上履きに履き替えながら声をかけたら、どこか挙動不審な様子で視線がおぼつかない。

その上くるっと背を向けて立ち去ろうとする。


って、なんでそんな挙動不審なんだろ。



「あっそうだ、瀬戸ーー」



声をかけようとしたけど、気づけば瀬戸は角を曲がって姿が見えなくなっていた。


おっと、もしかして……逃げられた?


あたしが恋文交換を断ったから?


ありえる。すごくありえる。


約束だったお菓子だってあんなに渋られたし。


ん? 待って。だとしたらさっきのは挙動不審なんかじゃなく、避けようとしてただけ?



なにそれ。それってなんかむかつくなぁー!


本当にそれが原因なんだとしたら、瀬戸ってばなんてちっさいヤツなんだ。



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