妄想ラブレター
出しっぱなしにしてた外靴を靴箱に直そうとした時、何かが視界の端に止まった。
…………ん?
昔から使われているスチール製の下駄箱。だいぶ年月を重ねたようで、元々の色が分からないほどに茶色くくすんでる。
そんな下駄箱の奥がなぜか、白い。
小さな箱の中、奥は薄暗いけれどそれでも明らかに色味が違ってる。
なんで? そう思って手を突っ込むと、カサリと紙が擦れる音がした。
指先にはさらりとした感触。スチールとは違う温かさ。
「……手紙。なんで」
呟いて思わず辺りを見渡す。
登校時間、人は多いけれど、みんな眠そうだったり、友達と会話してたりであたしの存在を特に意識する人間はいない。
ほっとして、手紙を素早く鞄の中に押し込んだ。
もしこんなとこ友達にでも見られたら、絶対冷やかされるに決まってる。特にカンなんかに見つかったら一生ネタにされかなねないし。
とりあえす、差出人は見なくたってわかる。内容は教室行ってからゆっくり確認しよう。
あたしは下足箱に靴を入れて、教室へと駆け出した。