妄想ラブレター
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授業が終わり、教室内が騒がしく音を立てる中、あたしは瀬戸の背中を指でつついた。
「ねぇ、瀬戸」
「ん?」
「手紙、読んだよ」
「ああ」
……さっきから素っ気なくない?
なんで振り向こうとしないのよ。いつもなら声をかけなくても振り向いて話しかけてくるのに。
「あたし昨日もうしないって言わなかったっけ?」
そしてそれを君は了承してなかったっけ。
「……」
背を向けたままだんまり。本当なに考えてんのか分からん。
まぁ、いいけどね。あたしだって書いてきたし。
「瀬戸、実はさ、」
「分かってる」
……ん?
なにが?
「キモいって言いたいんだろ?」
「あっ、いや」
「これで最後のつもりだから安心して」
「だから、」
「一応ちゃんとしたもの貰ったから、その、返事っていうか……」
「だから、ね……」
「俺の自己満で書いただけだから」
「話聞けよコラ」
毎朝セットしてるのであろうワックスで少し遊ばせた髪を思いきり引っ張って、むりくり瀬戸を後ろ向かせてやった。