妄想ラブレター
「……秋月」
今度は瀬戸があたしを呼ぶ。
「なぁ、秋月って」
せっかく寝れそうだと思ったのに、瀬戸のヤツはしつこく声をかけてくる。
「んー?」
「これ、なんだよ」
「なんだよって、なんだよ?」
相変わらず机に伏せたまま、ぶっきらぼうに返事を返す。
「この手紙の内容に決まってるだろ。意味わかんねぇ」
あーやっぱり。だよねー。
「あさ、かお……?」
「浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき……でしょ」
伏せてた顔を上げて瀬戸を見やると、彼は予想外にもすぐそばに顔を寄せて手紙を読んでた。
突然起き上がったあたしに驚いて、勢い良く身を引く瀬戸。けれどそれに負けず劣らず、あたしも身を引いた。
「ごめん!」
「ううん! こっちこそ!」