妄想ラブレター



いくら仲良くなったとはいえ、やっぱりまだ一ヶ月足らず。お互いのパーソナルスペースは思ったよりも狭かったみたい。


他の仲良い友達なら大丈夫な距離も、瀬戸とはまだ違和感を感じてしまうんだと思う。


それにしても瀬戸ってば、あからさまな咳払いなんてしちゃって……。


なんてごまかしが下手なんだ。さすがにそれはちょっと傷つくぞ?



「まぁ、なんだ……えっと、なんの話してたっけ?」



おいおい。



「手紙でしょ」



思い出したようにあたしの手紙を広げて、もう一度目を通す。


ただし、それも一瞬。だって今回あたしの手紙はたった一言だから。


ーー浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき。


それがあたしが昨日、書いた手紙の内容だ。



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