妄想ラブレター



……瀬戸ってば、詩人じゃん。


あたしは瀬戸に貰ったポッキーをかじり、忙しなく口を動かしながら手紙を見つめてる。


瀬戸が書いた2通目のラブレター。


いいや、正確には3通目か。けど、一番最初のはラブレターとしてカウントしてない。しかも破いて突っ返してしまったし。


だからこれがあたしの手元にある2通目のラブレター。



“散るとみてあるべきものを梅の花うたてにほひの袖にとまれる”



前回あたしが百人一首から引用したのと同様の手口で、瀬戸も歌を書いてきた。


けど元々国語が苦手なあたしは、歌なんて全くわからないし、知らない。


百人一首だって一首も覚えてないし。前のもネットで検索しただけだし。


だから瀬戸の歌もネットで検索してみたら、速攻かかった。


どうやら歌は既存のものだった。


まぁ、それは当たり前か。瀬戸も歌えるほど古典が得意なら、こんなラブレターのやり取りをしようだなんて言わなかったかもしれないし。



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