**青空ドロップ**~君が落としたラブレター〜
「またね」
そう言って私は駆け出した
鞄を右手に持って
左手で涙を拭うようにして。
後ろからは風斗が名前を呼ぶのが聞こえる
けど振り返れない、止まれない
だって泣いてるところ、見られたくないから
風斗には見られたくない
だって風斗は泣いてる私を知らないから
笑顔の私しか知らないから
出口に近づくにつれて
雨音が大きくなっていく
私が嫌いな雨音が嫌でも耳に入ってくる
耳を塞いでしまいたい
でも塞いだところで雨音は消えない
雨は止まない
ザーザーと大粒の雨が地面に降り注いでる
あ…傘…
自分が傘を持っていないことに今更気づく
来る時は確かに持ってきたのに
もしかしてベンチのところに置いてきたのかも
けど取りに戻ることもできない
戻ったらきっと風斗がいるから
そうやって右往左往してると
突然、背中がぽんっと押された
そのせいで体は一歩前に押し出されて
私は雨に打たれた
雨が私に降り注いで
一瞬にしてびしょ濡れとなった