**青空ドロップ**~君が落としたラブレター〜


ぴったりと閉まったドアの前で

私達はしばらく立ち尽くした

どうしてしぃの名前があるの?

しぃはこの部屋の中にいるの?


「ど、同姓同名だよね?」



お願いだから、別人でいて。

この部屋の中にいるのはしぃじゃない

しぃはいない

いて、ほしくない


「ひなたが知ってる"しぃ"だよ」


なんで、なんで

なんでが止まらなかった

風斗はノックをして静かに真っ白な扉を開けた

この建物は白すぎる

無機質で殺風景で何もかもが真っ白で

希望の色なんてないみたいで。



「しぃ?」


思わずぎゅっと瞑ってしまった目を

私は静かに開けてその姿を確認した

足がコンクリートで固められたみたいで

固くて動かなくて現実を拒否してるみたい

そんな私の手を握って

"大丈夫だから"

そう背中を押してくれたのは風斗だった



「風斗なんで連れてきたの」



ベッドで横になって窓の外を眺めていた彼は

私が声をかけるとすぐに振り返って

私を見つけると目を丸くさせて

そして、悲しく笑った

その姿はあまりにも悲しくて

しぃの表情にはシトシトと雨が降り注いでるみたいだった

外は太陽がキラキラ輝いてるのに

しぃにだけ雨が降ってる


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