**青空ドロップ**~君が落としたラブレター〜


あっという間にはるがやってきた

外ではピンク色の桜が咲いているだろう

そんな季節になっても

私は自分の部屋から出られないでいた

完全なるひきこもり状態だ


あと1週間もすれば大学の入学式がやってくる

でもどうしても行く気にならない

そこに行くとまた、涙が止まらなくなるから

しぃと約束した大切な場所

でもそこに君はいない

約束したのに、私だけがいても意味がない


そして今日もまた1日が過ぎようとしていた

そんな日の夕方、1通の着信があった

風斗でも咲くちゃんでもない

非通知の着信

いつもは絶対出ないのに今日はなぜか出てしまったんだ


「もしもし」


携帯を耳に当てると少し懐かしい声がする



「急にごめんなさい。時雨の母です。ひなたちゃん、今からちょっと会える?」



それは時雨のお母さんからの電話だった

時雨のお葬式以来顔を合わせていない

というより、私が引きこもって勝手に避けていた

何度も電話はかかってきていたのに。


今から家を出て駅前の喫茶店に向かう

外に出るのなんていつぶりだろう

玄関を出るとお母さんとお姉ちゃんが嬉しそうに

"いってらっしゃい"と言ってくれた

きっとたくさん心配かけてたんだろうな

そう思うと少し胸が苦しかった

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