めくるめく恋心
視線を合わせる様にしゃがみ込んだ秋ちゃんは、何故か眉尻を下げて困ったように笑った。


「っ!?」

「泣き虫。」


いつの間にか流れていた涙を親指の腹でグッと拭われた。

_そんな事されたら余計止まらないよ……。


「あーあー、泣き過ぎ。」

「だって……っ、秋ちゃん、私もごめんね。 全然連絡できなくて、混乱させて、自分の事ばっかりで……本当っ、ごめんなさい。」

「生きて戻って来てくれてありがとう。」

「っ……。」

「まだ、言えてなかったから……。」


どうしても溢れる涙を止められなくて、膝に顔を埋めた。浅くなる呼吸。足との隙間に熱がこもる。


「暫く止まんない、からっ、トイレ行っで……っ!!」


頭をクシャっと撫でられ、心臓が跳ね上がった。そして胸がキューっとなった。

秋ちゃんが立ち上がる気配がした。足音がどんどん遠くなっていく。

私は顔を埋めたまま、自分で自分を包み込むように腕をギュッと掴んだ。

また昔みたいに戻れる事が嬉しいのか、触れられた事が嬉しかったのか、分からなかった。

_これから私はどうしたいんだろう。

自分の気持ちなのに全然分からなかった。
< 205 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop