めくるめく恋心
「大丈夫だよ。」

「ほんと大丈夫かよ? お化け屋敷の中であんだけ追いかけ回されりゃ疲れんだろ。」

「え? 追いかけ回す方じゃないの?」

「こいつ目当ての女どもがここぞとばかりに来るから、逆に追いかけ回されてんの。 そのせいで千里は中じゃなくて呼び込み担当になったんだよ。」


_そうだったんだ。 そんな事があればそりゃ疲れるよね。

千里の頭を撫でた。すると笑われてしまった。


「心の手って落ち着く。」

「そう? でもこんな事しか出来なくてごめんね。」

「こんな事じゃないよ。 嬉しい、ありがとう。」

「おいこらバカップル、俺の存在を忘れてんじゃねーぞ。 それから、俺のジンジャー!!」


_あ、すっかり忘れてた。

急いでお代りを用意して、私はまた接客に戻った。特に呼び込み係がいないうちのクラスが込んでいるのは、恐らく秋ちゃんたちや千里のお蔭だろう。


「うっさぎさぁん。」


_へ? 私?

呼ばれてテーブルに行くと、なにやらチャラチャラした他校の男子生徒だった。普段ならあまり関わり合いのない様な人たちだ。


「ご注文ですか?」


空になったコップを見ながら違うだろうなとは思ったけど、何も聞かないわけにはいかないので、取りあえずそう聞いてみた。
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