めくるめく恋心
トイレに席行きたくなって席を立った。

トイレに向かいながら、ついきーちゃんたちのいる部屋を見てしまう。意識したところで部屋の中は見えないし、会話も聞こえない。それでも中の様子が気になってしまう。

トイレから出て手を洗っていると、トイレの個室から奈々子ちゃんが出てきた。一瞬ゲッ……と思ったけど、無視するわけにはいかず取りあえず笑った。


「心ちゃんだ! こっちにも遊びに来てくださいよぉ。」

「ありがとう。 でも今日は葉山さんたちと来てるし、私が行ってもただのお邪魔かなと思うから、遠慮しておくね。」

「え〜ざんねぇん。 吉良の事聞きたかったんですよ?」

「きーちゃんの?」


鏡を見ながら唇にグロスをのせている奈々子ちゃんは、普段は可愛い感じなのに色っぽく見えた。

_自分に自信があるんだろうし、周りへの自分の見せ方もよく分かってるんだろうな。


「家族と居る時の吉良ってどんな感じなのかなぁ?とか、吉良のいろんな話を聞きたかったんです。」

「……奈々子ちゃんたちと居る時とあまり変わらないと思うよ?」

「そうなんですかぁ? それでもやっぱり見て見たいなぁ。 みんなでいる時の吉良はツンデレだけど、二人でいる時はツンツンがちょっと強いから、逆にそれが可愛かったりするんですよねー。 でも意外としっかりしてて面倒見がいいっていうか、兎に角一緒に居るとキュンとしちゃいます。」

「そう、なんだ……。」


_もう、聞きたくない。

私の知ってるきーちゃんは甘えん坊でちょっとワガママで……どっちが本当の姿なんだろうって思ってしまった。私は小さいころからきーちゃんの事を知ってるから、つい子供の頃からの癖で私が面倒をみてる様に接してしまうけど、きーちゃんはそんな私に今でも合わせてくれてるだけなのかもしれない。
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