めくるめく恋心
きーちゃんはズボンのポケットを探り始め、スマホを取り出すと耳に当てた。どうやら電話だった様だ。


「もうみんな集まってんの? あーわりぃわりぃ。 着替えたらすぐ行くわ。」


きーちゃんが電話で話している中、私はただ隣でじーっとしていた。部屋が静かなせいか、嫌でも相手の声が耳に入ってくる。

_予定がなくなったんじゃなくて、着替えに帰ってきただけだったんだ。 あ……今の声……。


「はいはい。 そんなでかい声で言わなくても聞こえてんだよ。」


奈々子ちゃんの『早くー!! 吉良居ないと寂しいよぉー!!』って声がしっかりと聞こえた。

_あんな可愛い子に、あんな可愛い声であんなこと言われたら私に勝ち目なんてない。 けど……。


「っつー訳で、俺また直ぐでなきゃいけないんだよね。 ココちゃんも彼氏と会うんでしょ? あ、そうだ。 これ俺も渡しとくね。」


立ち上がったきーちゃんは引き出しから箱を取り出すと私に渡した。


「メリークリスマス!」


きーちゃんの笑顔がぼやける。


「ココちゃん!? 何で泣いて……」

「行か、ないで……お願い……奈々子ちゃんのっところ、に……っ行かないでっっ。」


きーちゃんのシャツの裾を握りしめる手が震える。それでも放してしまわない様に、グッと力を込めた。
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