フィルムの中の君
それから数日が過ぎ、気付けば文化祭3日前となっていた。
「今日何曜だっけ〜?」という質問に、「あと3日で文化祭なんだから月曜だよ!!」というやりとりが教室内で聞こえる。
「すーばーるっ!」
一際目立つ声で昴の背中を叩いてきたのはボブが印象的な彼女だった。
「痛いよー芽衣」
ごめんね〜と言いつつ悪びれる様子が一切無い。
「ねぇ、ちょっと場所変えない?」
珍しい彼女のそんな発言に「いいけど…」と後を付いていく昴。
後ろを振り返ることなく芽衣はずんずん進んで行った。
「…またここ?」
思わず笑うしかなかった。
「本当に保健室好きだねぇ」
何かあるたびに毎回保健室に連れてこられてきた。今日もどこに行くのかと思えばいつも通り保健室。
中で仕事をしていた養護教諭の中里は振り返るとニヤリと笑みを浮かべる。
「あなたたち、やーっと来たわね!」
パソコンを閉じ纏めた書類を持って中里は立ち上がった。
左手にはキラリと光るものがある。
「はい、これどうぞ」
ぽいっと投げられてとりあえず受け取る昴。光るものの正体は鍵だった。
「これ…鍵!?なんでですか!?」
バシッ!
そんなの決まってるじゃないの!と自慢気に芽衣の肩を叩く中里。
「どこかの友達思いな女の子に部屋を貸してくれ〜って言われたのよ」
じゃああとはお好きにどうぞ、と言い残して中里は部屋を出て行った。