フィルムの中の君
「ちょっと待てよ!!」
何か誤解させちゃったならごめんね、と逃げようとする昴の腕を掴んだ。
演劇部、管弦楽部、合唱部がそれぞれ話し合ったいたはずなのに体育館の中で優の声は響き渡った。
一瞬にしてほぼ全員が優を見る。
優、離して。と目で訴えられたがそれに応じることはなく、
「すみません、少し外で2人で相談してきます」と言い残し無理矢理腕を引いて外へ出て行った。
「なんだあれ…」「さぁ?ケンカ?」
とざわざわ話し出す生徒たち。
そんな中管弦楽部の中で、
「すみません、ちょっとトイレ行ってきます」
と、強引に1人の生徒が体育館から抜け出して行った。
そんな状況は知らず昴と優の2人は衣装のまま体育館近くの階段を上へと登り、屋上に繋がる扉の前に座り込む。
「ねぇ優、なに?なんなの?」
いつもの穏やかな表情とは違い、言葉遣いがきつくなる昴。
「何って…それ俺の方なんだけど?」
お互いイラついて、ピリピリとした空気がその場に流れていた。
「芝居の途中で…しかも通しの途中であれは無いだろ普通」
「私何か迷惑かけた?誤解させるようなアドリブ入れてごめんねってさっき謝ったよね?」
「さっきからじゃないよ、ここ最近ずっとそんな感じ。昴何で怒ってんの?」
その一言でスイッチが入った昴は立ち上がり、
「だからそれは!!!」
と、思わず大声を出してしまう。
その瞬間我に帰った昴はすーっと感情が収まり、言いかけた言葉を訂正し始めた。
「それは?」
「いや、あの、それは…」
次に出す言葉が見つからなくて焦る。
「ねぇ昴、言いたいことあるんだったらハッキリ言ってよ。このままじゃサウンドもそうだし、今やってるコードネームも、これから先の仕事もお互い蟠りを抱えたままやらなきゃいけない」
優にこんなこと言わせるような態度をとった自分に昴は腹が立った。
(ごめんね優、違うの。違うんだ。
本当は怒りたかったわけじゃないの)