フィルムの中の君
(私女優なのに何でこういうときは上手く演じられないんだろ…)
自分の不器用さに呆れるしかない。
(本当はもっと違うやり方で…
離れた場所から応援したかったのにな)
思った通りに物事が進まず申し訳なさと不甲斐なさで昴の心はいっぱいだった。
「昴!!!」
左足が地に着いたと同時に自分の名前が聞こえ動きが止まる。
でも振り返ることはしなかった。
「でも、何かあったらすぐ言えよ。
連絡するのいつでもいいから」
その優しい言葉に我慢していた涙が溢れそうになり必死で堪える。
「…もうそれ以上優しくしないで。
そうじゃないと本当に私…」
ここまで言いかけてマズイと気付いた昴は走って逃げた。
「ちょっ…昴!おい!」
優は階段を駆け下りて後を追ったが昴の姿は見えなかった。
(逃げ足早すぎでしょ…)
わりと足の速い優が全力で降りても追いつかなかったほどのスピードで昴は逃げていた。