フィルムの中の君
『さぁ始まりました『ランチタイムでshow!』今日はとても可愛らしいあの方もゲストに来てくれています!』
番組冒頭女性アナウンサーがいつも通りに話始める。
芽衣はお昼を食べながらテレビ画面に釘付けになっていた。それは芽衣だけではなくクラス全員…いや、学校中がテレビを見ているであろう。
こうなった発端は芽衣の一言だった。
「先生!昴が生放送でテレビ出るんですよ!お昼の時間だしテレビ見てもいいですよね!?」と。
それがあっという間に学校中に広まり、今日の昼休みは全クラスで『ランチタイムでshow!』を見ていた。
曜日ごとのコーナーが次々と放送されて、いよいよ芽衣が見たがっていたコーナーへと移る。
『さて、トークでshow!のお時間がやって参りました』
CMが開けすぐに女性アナウンサーがコーナーのタイトルコールをした。
『本日のゲストはドラマ黒鳥(ブラックバード)主演、女優の櫻井昴さんでーす!』
カメラが昴の姿を映すとおぉー!という歓声や叫び声が次々とする。それはどうやら昴と芽衣のクラスである2組だけではないらしい…と、隣や上下の教室からの声で理解出来た。
『皆さんこんにちはー!
黒鳥で菱川蘭役を演じています
櫻井昴です!!』
司会のアナウンサーや他の共演者たちとよろしくお願いしますと挨拶を交わし、トークへと入っていった。
高校のこと、友達のこと、ドラマや仕事のことなど色々なことを話していく。
『黒鳥の現場はどんな感じですか?』
『そうですねぇ…皆さん優しくて仲良しな現場です!雰囲気がとても良くて』
他のタレントが黒鳥の出演者が豪華なことについて尋ねると…
『最初は緊張しちゃいました!
野上和彦さん、三枝かるなさん、真田ハルキさん…他にも日本を代表するような役者さんがずらーっと揃っていて』
『黒鳥はあの鈴屋監督がドラマをやるということでも話題ですよね!』
色々話していくうちに時間はどんどん進んで行く。ADを見てそろそろ終わりだと昴は思い、アナウンサーは切り上げようとする。
『クライマックスでスペシャルゲストも登場されるんですよね!』
思わぬフリに昴は「え?」と固まった。
番組の打ち合わせでは聞いてなかった話。
生放送で言葉を発しないのはまずいと思い笑って返す昴。
一瞬頭が真っ白になりかけたが、とりあえず番宣だけはしようと締めの言葉を発する。
『私、櫻井昴が出演しています
ドラマ黒鳥(ブラックバード)
本日9時よりご覧の局で放送です!
ぜひご覧ください!』
このままこのコーナーが終われば平穏なはずだったのに、女性アナウンサーが最後に放ったスペシャルゲストの名前でCMに入ってしまった。
ーーー宮藤 優。
今注目の若手俳優の名前だった。