フィルムの中の君
周りを見ず自らの意志に従い道を進んでいく、というのはこいつの欠点であり同時に長所だな。
なんて思いながら蔵之介は海斗の後を付いて歩いていた。
着いたのは2組が使用している教室。
外観にも拘りがあるようでかなり凝ったデザインになっていた。
「あのー、作業中ごめんね。ちょっといいかな?」
「はい、なんですか?」
教室の前のドアから顔を覗かせ海斗が声をかけると、背後から返事が返ってきた。
その優しい声に振り向いた海斗は思わず声を上げてしまう。
「あっ!ほ、本物だ…」
その声の主…本物の櫻井昴は頭にハテナマークを付けたような表情で2人を見ていた。
あぁ、こいつが失礼なことを…すいませんね…と蔵之介が謝る始末。
「何かご用ですか?」
その一言で本題を忘れちゃいけない!と海斗は話を切り出した。
「あ、あの…瀬山さん、いる?」
「芽衣ですか?」
ちょっと待っててくださいね、と昴は教室の中へと入っていった。