フィルムの中の君
そもそもさ…
と申し訳なさそうに芽衣が手を上げる。
「どうやって2人にするの?
私たち劇関わってないし舞台裏なんて入れないでしょ」
「…………そこだよな」
話が振り出しに戻ったところで、
芽衣と蔵之介はため息を吐く。
しかしそんな2人を前にして海斗は、
「ちょっと2人とも!…と言うより蔵之介、僕いるの忘れてる」
と声を荒げて抗議した。
どういうこと?と首を傾げる芽衣。
「何でかい……あぁ、そっか!」
完全に忘れていた蔵之介も納得。
「僕、管弦楽部の部長なんだよね〜」
「オケで管弦楽部が入るんだよ!」
なるほどね、と芽衣も納得した。
「でも部長だからって何の権限があってそんなこと出来るんだよ…」
という蔵之介の疑問に海斗は…
「あのねぇ、僕を何だと思ってるの?
それぐらいどうにでも出来ますよ!」
それでも今はその怪しい満面の笑顔に頼るしかない。
よろしく!と2人は海斗の仕事に任せた。
「とりあえず…芽衣ちゃんは劇見に行くの?」
そんな質問から蔵之介と芽衣が一緒に観劇することになったのを、恨めしそうに海斗は見ていた。