フィルムの中の君
「お嬢様方、ぜひ休憩にお屋敷に戻られませんか?3階の1番端にある『イーデンホール』で皆様をお待ちしております」
まさに執事という感じで燕尾服を着た青年がにこやかに歩き回り宣伝をしている。
喫茶店をやることになった2組の宣伝係の男子生徒が15分前から校内を回り始めた。
「ねぇ!イケメンがいる喫茶店知ってる?」とあっという間に話は広がり、すぐに客席は満席となった。
「ほ、本物の櫻井さんですか!?」
お帰りなさいませ、という受付のメイド…櫻井昴に大抵の客は驚く。
昴にサインを頼む人も少なくは無い。
想像以上の客足に受付担当の3人は休む暇も無いほど。
そんな中、1人だけニヤつくメイドがいた。
「やっぱり…想像通りの入り」
学級委員の今泉有紗がぼそりと言う。
隣にいた昴が聞き返すと、
「それぞれ担当の振り分け、私の采配で間違いなんてあるわけないじゃない。
彼を宣伝に回したのも、もちろん昴を受付にしたのもこのため!」
メイド服を着て爽やかなイメージの有紗は策士らしい不敵な笑みを浮かべている。